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300文字小説

『初心者』  俳句を始めた。とはいっても、誰かに教えてもらうわけではなく、気儘に詠んでいるだけなので、気楽なものだ。  五・七・五の十七音の中に季語を入れて詠むのだが、これがなかなか頭を使う。意外と自分の周りが季語だらけなのに気づいたりする。毎日の生活の中で五音の言葉、七音の言葉を探すのは結構楽しい。見つけた言葉をせっせとメ…
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『きびしいお言葉』  幸子は中学時代からの夢であった保育士になった。途中、介護の仕事にしようかな、と迷ったこともあったが、未来のある子どもたちを相手にする方が夢があって良いなと、保育士を選んだ。  初めての担任は四歳児だった。  四歳児とはいえ、しっかりと意思表示のできる子や、何も言ってくれない子など、すでにさまざまな…
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『翼の上の席』 「指定するなら飛行機の席は翼の上だ」  父はそう言って、翼の上の席しか選択しなかった。翼のせいで外の景色はよく見えない。私としては不満たらたらだった。  今年の春、東京から北海道へ引っ越し、一人暮らしをすることになった。これからは飛行機の予約も何もかも、自分でやらなければならない。  「なんで翼の…
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『猫の犬』  「○○の犬」という表現、「組織の犬」などと使われ、あまり良い印象ではない。  「○○の猫」「政府の猫」・・・命令そっちのけでのらりくらり、日がな一日昼寝にいそしむ・・・思い浮かぶのは、そんな姿だ。身を粉にして命令を実行する使命感とは無縁だ。  「猫の犬」なら、どうだろう?  意味は猫の手先。ニャアと…
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『白いまんじゅう』  うちの夫の欠点は知ったかぶりと冗談が過ぎるところである。  娘がまだ小さい頃、家でケーキのモンブランを食べている時に、 「モンは山、ブランは白いという意味があるんだよ。だから、モンブランって『白い山』という意味のケーキなんだよ」 と得意げに説明していた。  私も横にいて、ふんふんと頷きなが…
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『シュレッダー』  シュレッダーを買いました。  白いのを通販で買いました。  バリバリバリバリ!これは愉快です。 通信簿も、手紙も、請求書も、写真も、なんでも。  バリバリバリバリ! 「あれ、入れちゃった」  まあいいや。  一度決めたらいさぎよく。さようなら。  バリ…
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『お気に入り』 「今日はいい天気だな」  チャポン。庭の鯉が跳ねると水しぶきがキラキラ光った。  うんと伸びをしてから廊下を歩く。  縁側から吹き抜ける風は、ほんのり湿った土のにおいと草のにおいがいりまじっていた。 「ふぁ~まだ眠いよ」  トコトコ歩く。  干した布団の上・・・陽の当たる和室の座…
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おしゃべり広場(300文字小説)

『四季の油断』  春は花粉症。ようよう黄色くなりゆく空を見た途端、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ。あわてて服薬するも時すでに遅し。いとつらし。  夏はあせも。だらだらと体のあちこちから流れ出る汗。あわててエアコンをつけるも、時すでに遅し。いと恥ずかし。  秋は虫さされ。ちっこい蚊が音もなく近づき、さりげなく刺す。あわてて蚊…
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おしゃべり広場(300文字小説)>

『ほめ言葉』  今年は大根が豊作だった。こんなたくさん食べきれない。 「そーたら、漬物にしたらどうだ」同居の義母がサラッと言った。 「レシピがあるから大丈夫だよ」  もう面倒くさいなんて言ってられない。  作ってみて、自分で自分をほめてしまった。確かにメチャメチャおいしい。近所や友人にも、胸を張ってお裾分け…
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おしゃべり広場(300文字小説)

『スペシャルサラダ』  ぽかぽか陽気に誘われて、散歩に出た。  自宅からしばらくは舗装道路を歩き、脇道に入ると辺りに田畑が広がっている。土の道を歩くとスニーカー越しの優しい感触が足裏に心地いい。  昨夜の雨でできた水たまりを覗いていると、わたしを呼ぶ声がする。声の主は、畑で手招きしているSさんだ。  Sさんに大き…
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おしゃべり広場(300文字小説)

『癒し犬』  ペットショップにやってきた。  引き寄せられるようにガラスに近づくと、中の仔犬と目が合った。  そこで、スタッフに質問。 「この子は、よくしゃべるの?」 「おしゃべりが得意な犬をお探しなら、あちらのコーナーに、おすすめが」 「いや、この子がいい」  ほかの犬なんて目に入らない。 …
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おしゃべり広場(300文字小説)

『不思議な関係』  暖かなある春の日、真っ白な猫がわが家の庭を横切って行った。  はじめは五日おきくらいに来て、私は不法侵入する猫を、「コラ!」と一喝していた。猫は「何だよ」と言わんばかりに私を睨みつけ平然と立ち去るのだった。  そのうち何が気に入ったのか猫は頻繫に現れるようになり、どうやら散歩道としたよ…
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おしゃべり広場(300文字小説) >『トウモロコシトルナ』

『トウモロコシトルナ』  父は定年退職後、家の近くに借りた畑で野菜作りを始めた。  ところが、ある日。  食べごろに育ったトウモロコシが無残にももぎとられ、かじられ、ごていねいに茎の根元に整然と並べられているのを見つけた。  近所の子どもたちのいたずらにちがいない、と頭に来た父。  白ペンキを塗った板に太く…
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おしゃべり広場(300文字小説)

『旅の楽しみ』  国内旅行をするには旅行会社のツアーに参加するのが手っ取り早い。  しかし、自分でプランを立て、時刻表とにらめっこして机上で旅行を計画する。  目的地を目指すには、どの路線の、どの時刻がよいか・・・あれこれ考えて、最適ルートを見つけ出すと満足する。  せっかくだから天気のよい期間を選びたいので、日…
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おしゃべり広場(300文字小説)

『以心伝心』 「母さん、アレはどこにあるかな?」 「アレですか。茶箪笥の上にありますよ」 「ああ、あった。ありがとう」  そばで聞いていると何を言っているのか分からない会話を、両親は毎日のように繰り返す。 「長年夫婦やってるとね、お父さんが何を言いたいのか分かるのよ」  母はそう言っていたが本当だろう…
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おしゃべり広場(300文字小説)

『青春のひとコマ』  部屋の片付けをしていたら埃をかぶった黒カバンからフィルムが出てきた。あぁ、前は結構フィルム代も現像代も高くて、すっかり使わなくなったけど・・・なんて思っていたら、カバンの底から使用後のフィルムが出てきた。未現像だ。  一瞬、息を飲んだ。何が写っているんだ、このフィルムには?宝箱を発見したような気分になっ…
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『ありがとう、マイ自転車』  先日、十年ぶりに自転車を買い替えた。  新しい自転車を受け取り、古い自転車とお別れする時、急に寂しさがこみあげてきた。  まざまざと蘇る十年間の記憶。  車を運転できない私は、どこへ行くにも自転車に乗って出かけた。  息子が生まれてからは後ろに息子を乗せて、幼稚園や病院までの長…
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おしゃべり広場(300文字小説)

『ペンフレンド』  私にはペンフレンドがいる。  雪国で暮らす同年輩の女性で、文通を始めてから三年になるが、まだ一度もお会いしたことはない。  メールやパソコンの時代に、時代錯誤と笑われそうだが、これが思いのほか楽しい。  便箋いっぱいに何枚も長い手紙を書く。日溜まりの部屋で、炬燵に入ってコーヒーを飲みながら、よ…
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『ご都合主義』  僕と愛犬の関係は微妙だ。  呼んでも無視され、寄ってない。抱いても、すぐ下ろせといわんばかりに暴れる。  普段、世話を妻に任せきりなので当然といえば当然だが、実に悲しい。  しかし先日、検診のために愛犬を動物病院に連れて行った時のこと。  僕は、獣医師に怯え震える愛犬が、妻に宥められながら…
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『ヘソ天猫』  我が家の猫は、いわゆるヘソ天・・・おなかを上にして寝る猫だ。朝から晩までヘソ天。ゴロンと寝っ転がって、ヘソ天になり、「にゃ」とアピールしてくる。  パソコンしていれば、足元で。テレビを見ていれば、テーブルの上でヘソ天ポーズをとる。  夜中、目を覚まし、隣でヘソ天になっている猫を見ると、ちょっとびっくりす…
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『吾輩は野良の猫である』  吾輩は野良の猫である。  名前はたくさんある。  吾輩はある家の小屋で生まれた。  吾輩がこの家で初めて出会った人間が、吾輩のことをクロと呼んでいた。  全身が黒色の毛で覆われているから、それでクロだそうである。  その後、近隣の家も訪ねるようになると、タマやらチャチャやら…
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『敵は本能寺』  定年退職後は晴耕雨読の日々を送っている私。その日の天気によって「あれをしよう、これをしよう」と考えながら、静かに時を過ごす。 「そうだ!今日は天気が良いので、板塀のペンキを塗ろう」  私はペンキと刷毛を揃え、ペンキが付いてもよい服に着替えて、帽子にマスク、手袋もはめて、やる気満々。  それでも急…
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『僕は五円玉』  僕は五円玉。たいていみんなの財布の中に入っているが、なかなか使われない。  飲み物を自動販売機で買う時も僕は使われない。  なぜだろう?腹に穴があいているからか?軽くて光っていないからか?  地味な僕。でも僕がいなければ、きっと皆は困るはず。  例えば百円ショップ。買う時には皆僕を探してくれる…
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『子ども心と女心』  子どもの頃、私は歳より幼く見られていた。それが子ども心に嫌だった。  ある日、曾祖母が遊びに来て私にこう訊いた。 「おばあちゃん、いくつに見えるかしら?」  当時八歳だった私の常識によれば、人は本当の歳より上に見られると喜ぶ。  しかも、大人は長生きを喜ぶ。これはあり得ないくらい上に歳…
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『さんぽ』  清々しい秋空。休日の今日、息子と一緒に近くの公園に出かけた。  樹々は季節柄、緑から黄へと変化し始め、その実をお散歩コースに落としていた。  息子が小さな手で落ちたばかりの銀杏を拾って私にくれた。空にそれをかざして一緒に見た。  私たちは手をつなぎ、落ち葉が敷かれた道を歩き始めた。私は立ち止まって一…
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『歳を重ねて』  膝から猫の体温が伝わってくる。  夏場には寄り付かなかったミーちゃんが、私がソファに座ると、しんどそうな仕草で上がってきて、「みゃー」と一声。  当然のように前足で膝の上の座り場所を確認し、ゆっくりと腰を下ろした。      何歳になったのか、野良猫時代を入れれば十七歳ぐらいになっているはずである…
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『かまぼこの無言』  シシャモの無言も恐ろしいが、それ以上に恐ろしいのが、かまぼこの無言だ。  シシャモとかまぼこをツマミに、ハイボールを飲むことにした。  ガリガリと齧ったシシャモを、シュワシュワのハイボールで流し込む。  一口大に切ったかまぼこには、わさびをつけて頬張るのが望ましい。  こちらはツンとシ…
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『ご先祖様に力』 「おばあちゃん、僕の先祖ってどんな人?」  ある日、僕は祖母に聞いてみた。  年長者だけあって、祖母は自分より三世代前の人物まで詳しく知っていた。  僕はふと計算してみた。  親は二人いる。祖父母は、父方、母方合わせて四人。祖父母にも二人ずつ親がいるから、曽祖父母は八人。  一世代さ…
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『遺品整理』  納戸には夫の遺品がいっぱいつまっています。    登山道具に天体望遠鏡、本棚にはマンガ本がズラリ。    本職だった油絵のキャンパス、大小の額、未完成の絵が雑然と立てかけてあります。  段ボール箱を開けると、同人誌と原稿用紙。  何から処分すれいいの・・・。  気が遠くなりそう。 …
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おしゃべり広場(300文字小説)

『ベタなカツ!』  うちの母ちゃんの弁当は、すげーベタだ。部活の試合や期末試験が近くなると作る弁当の中身は、一段目に白米、二段目に豚カツを敷き詰めたベタすぎる勝つ弁当だ。  逆に喧嘩をした日は「あんたにはコレで十分」とオカズにワサビや辛子を練り込んだ、泣いて詫びろ弁当になる。  その日は三年間着てくたびれかけた制服姿。…
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